【第1回】受験が終わった日に始まった、新しい勉強
中学受験を終えたその日、授業の時間に一人の小学生が教室にやって来ました。
長い受験勉強を終えたばかりですから、きっと疲れているだろうと思っていました。ところが、予想とは違い、扉を開けて入ってきた彼の表情は、とても明るく、どこか解放されたような様子でした。
そして席に着くなり、こう言いました。
「これでもう受験勉強はしなくていいんですよね。」
ようやく肩の荷が下りた、という安心感だったのだと思います。
その流れで、以前から彼に頼まれていた話を思い出しました。
「受験が終わったら、相対性理論を教えてほしい。」
授業の合間の雑談で、宇宙やブラックホール、ビッグバンの話をすることがあり、彼はいつも目を輝かせて聞いていました。
どうしてそうなるのか、自分にも分かるなら知りたい、と何度も言っていたのです。
そこでその日は、三平方の定理を使いながら、アインシュタインの特殊相対性理論――速く動くと時間の流れが遅く見えるという「時間の遅れ」の話をしてみました。
難しい内容ではありますが、式や図を使いながら説明していくと、彼は驚くほど集中して聞き入り、授業が終わる頃には「もうこんな時間?」と本気で驚いていました。
受験が終わった直後に、自分から「もっと知りたい」と言って学びに向かう姿を見ることができたのは、私にとっても忘れられない時間でした。
点数や合格ももちろん大切ですが、それ以上に、「知りたい」と思う気持ちが育っていることこそ、長い人生の中で本当に大切な学びなのだと思います。
そして、その気持ちに寄り添い、一緒に学ぶ時間を持てたことは、指導する側にとってもとても幸せな経験でした。
受験が終わって、勉強も終わるのではなく、
そこから本当の学びが始まる。
そんな瞬間に立ち会えたことを、今も嬉しく思っています。